☆川村たかし 文 (新しい国語三年下 東京書籍より)
町外れの広場にサーカスがやってきた。
らいおんのじんざは年を取っていた。時々耳をひくひくさせながら、テントの影の箱の中で一日中眠っていた。眠っている時はいつもアフリカの夢を見た。
自分の番が来るとじんざはのそりと立ち上がる。
ライオン使いのおじさんが、チタン、チタッとムチを鳴らすとじんざは火の輪をめがけてジャンプした。うまいものだ。
夜になってお客が帰ってしまうとサーカス小屋はしんとした。おじさんがのぞきに来て言った。「たいくつかね。ねてばかりいるからいつのまにか、お前の目も白くにごってしまったよ。今日のジャンプなんて元気が無かったぞ」
「そうともさ。毎日同じことばかりやっているうちにわしはおいぼれたよ」
「だろうなあ。ちょっと代わってやるから散歩でもしておいでよ」ライオンは人間の服をきてうきうきしながら外に出た。
「外はいいなあ」独り言を言っていると声がした。男の子が一人立っていた。
「もうライオンはねむったかしら。僕ちょっとだけ傍へ行きたいんだけどなあ」
じんざはおどろいてもぐもぐたずねた。
「ライオンが好きなのかね」「うん大好き。それなのに僕達昼間のサーカスを見たときはなんだかしょげていたの。だからお見舞いに来たんだよ」
じんざはぐぐっと胸の辺りが熱くなった。
「僕サーカスが好き。おこずかいためてまた来るんだ」
じんざは男の子の手を引いて家まで送っていく事にした。
男の子のお父さんは夜の勤めがあって留守。お母さんが入院しているので付き添いの為にお姉さんも夕方から出かけていった。
「僕は留守番だけどもうなれちゃった。それよりサーカスの話をして・・」
「いいとも・・・」
「サーカスのおじさんおやすみなさい。明日ライオン見に行っていい?」
「来てやっておくれ。きっと喜ぶだろうよ」じんざが手を振った。
次の日ライオンのおりの前に夕べの男の子がやってきた。男の子はチョコレートのかけらを差し出した。じんざはチョコレートは好きではなかった。けれども目を細くして受け取った。じんざは嬉しかった。それから男の子は毎日やってきた。
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いよいよサーカスが明日で終わると言う日男の子は息をまずませてとんできた。「お母さんがね、もうじき退院するんだよ。それにおこずかいもたまったんだ。明日サーカスに・・火の輪をくぐるのを見に来るよ」
じんざの体に力がこもった。目がぴかっと光った。「ようし。明日若い時のように火の輪を五つにしてくぐりぬけてやろう」
その夜更け・・・出しぬけにサイレンが鳴り出した。「家事だ!」じんざははね起きた。男の子のアパートあたりがぼうっと赤い。じんざは古くなったおりをぶちこわして、まっしぐらに外へ走り出た。
「中に子供がいるぞ。助けろ」と誰かが怒鳴った。「ダメだ。中にはもう入れやしない」それを聞いたライオンのじんざは、ぱっと火の中へ飛び込んだ。「誰だ、危ない。引き返せ」じんざは足を引きずりながら、男の子の部屋まで辿り着いた。部屋の中で男の子は気を失って倒れていた。じんざはすばやく抱きかかえて外へ出ようとした。けれども表はもう炎がぬうっと立ちふさがってしまった。石垣の上の窓から首を出したじんざは思わず身震いした。高いのでさすがのライオンも飛び降りる事はできない。じんざは力の限り吠えた。
うぉーっ
その声で気がついた消防車が下にやってきてはしごをかけた。上ってきた男の人にやっとのことで子供を渡すと・・・煙のためにもう何も見えない。
「はやく飛び降りるんだ!」
だが、風に乗った炎は真っ赤にアパートを包み込んで、火の粉を吹き上げていた。ライオンの姿はどこにもなかった。
やがて人々の前に、一塊の炎が舞い上がった。そして炎はみるみるライオンの形になって、空高くかけ上がった。ぴかぴかに輝くじんざだった。もうさっきまでのすすけた色ではなかった。
金色に光るライオンは、空を走り、たちまち暗闇の中に消え去った。
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次の日は、サーカスおしまいの日だった。けれどもライオンの曲芸は寂しかった。おじさんは一人でチタッとムチを鳴らした。五つの火の輪はめらめらと燃えていた。だが、くぐりぬけるライオンの姿はなかった。それでもお客は一生懸命手をたたいた。ライオンのじんざがどうして帰って来なかったかを、みんなが知っているので。
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さりこの国語の本読みでいまコレ読んでます(※所々省略してます。あしからず)
初日に「じんざはどこいったん?」と聞くとさりこは目にいっぱい涙を浮かべていました。
さりこの心が育っているのかなってちょっと嬉しくなりました。
このお話、じいぃんと来ませんか・・・?私も泣きそうでした・・
昨日もやけどをして赤くなっている私の手を見て、さりこが「大丈夫?」って言って冷凍庫の中から小さな保冷剤をハンカチに包んで持ってきてくれました。
すごく嬉しかったです。
ふうこもさりこも心育ってる・・・
こんな宝物がいて、ワタシは・・しあわせだな~~(*^_^*)
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